ダン・チャバノフ
ドメスティック・エリート
ニューヨーク・シティに暮らすロシア生まれのダン・チャバノフは、伝説的なフレームビルダー、リチャード・サックスのバイクチームに所属しています。今年、RSCX(リチャード・サックス・シクロクロス)はラファのカスタムキットでアメリカの最高峰のレースに出場します。元バイク・メッセンジャーでレッドフック・クリテリウムで3勝をしているダンは、常にレースの先頭で争うことでしょう。
シクロクロスを始めたきっかけは?
最近走ったライドを思い出してみて下さい。いつものルートから外れてグラヴェルを走ったのでは? かなり楽しかったのでは? おめでとうございます、あなたはもうシクロクロスライダーですよ。シクロクロスを始めようかと考えている人にはいつもこう言っているんです。「未舗装路を見つけて、その道を行くとどこに出るのか走ってみて下さい」って。その後は、シングルトラックを走りに行って、ヒーヒー言ってみるといいと思います。
クロスバイクが必要かどうか?
最初はクロスバイクでなくてもいいです。可能な限りいちばん太いタイヤを付けて、森に入ってみましょう。私も、10年前にまさにそうして始めたのです。ロードバイクでグラヴェルや小道に分け入って、新たなチャレンジを見つけようとしていました。一番のコツみたいなものはあるかって? 少しスピードは落としつつ、舗装路だと思って走るということでしょうか。あとは、上半身をリラックスさせること。ハンドルバーを握りしめすぎないこと。あまりハンドル操作に頼らないことです。
どのようにレースを始めたか?
躊躇せず、飛び込むべし。できれば、いきなりレースに飛び込んで、もがきながら学んでいくのがいちばんのオススメです。でも、そういうのが好きではない人なら、地元のサイクリング・コミュニティに加わるといいでしょう。いよいよレースに挑戦するとなったら、私からの最後のアドバイスは、現地に早く入り、レース後も長居することです。ロードレースと違って、シクロクロスレースはコミュニティの良さ自体が魅力となるほど素晴らしいので。友だちと一緒に試走をしたり、自分のレース後もまったりしつつ、違うレースに出ているライバルを応援したり。プロとしてのアドバイスは、ヤジったりするのはもう古いということ。応援しかないですね。みんな応援に力を入れている。
メレディス・ミラー
アメリカの偉人
2013年にロードレースを引退したアメリカの偉大なレーサー、メレディス・ミラー。シクロクロスレースからも公式には2016年にリタイアしたはずが、いまでも他のレーサーを後塵の中に置き去りにしています。ラファ サイクリング クラブ ボールダーのコーディネーターとして多くのサイクリストをインスパイアしている時以外のメレディスは、クロスヴェガス、グラインデューロ、CXシングルスピード・ナショナルズなどなど、行く先々で勝利をものにしています。
シクロレースというものはどんな感じですか?
シクロクロスのレースは時間は短いですが、最もキツい種類のレースだと言えるでしょう。30〜60分、最初から最後までオールアウトです…もちろん、ビール・ハンドアップのためにストップしなければですが。ビールを一気飲みした直後、自転車を降りて担いで階段を駆け上がらなければいけない。視界がボヤけてくる中、オフキャンバーの泥斜面をコース下の柵までお尻から滑り落ちていかないで済むよう、すべての知恵を動員して走行ラインを決めなければいけないのです。お次は、泥で2〜3キロ重くなった自分とバイクを引きずって、「もっと速く走れ!」と叫んでいるパートナーのところまでたどり着き、きれいなバイクに優雅に交換してもらわなければ。これをさらに4回繰り返します。(注:すべてのレースにビールのハンドアップがあるわけではありません。もしあったら、ラッキー!)
強くなるために何をしましたか?
クロスバイクに初めて乗った時は、私はまだ完全なローディでした。長いストレートを力強く走るためのエンジンは持っていましたが、ピーナツバターのような泥の中を動き回るのにこのエンジンは役立たずで、深い溝だらけの急斜面を下る時には体がこわばってしまいました。氷の上を走らなければいけない時には泣いていたかもしれません。けれども、わたしの住むコロラドのレースコースは走りやすく、ヨーロッパのような泥だらけのレースはほとんどないため、あまり練習ができませんでした。基本的なスキルは、近場の公園で練習しました。練習レースに飛び入りしました。二輪でのドリフトに慣れるために、MTBにも乗りました。歩道の段差をバニーホップで越えたり、溝を走ったり、重たい泥をスープのように巻き上げるチームメートを追いかけて走りました。決死の覚悟で身につけて行きました。
シクロクロス愛を自覚したのはいつでしたか?
照明の下でのレースでした。シクロ狂のファンがコースにびっしりと張り付いて、すべてのライダーが通るたびに応援やヤジを飛ばす。ビールのハンドアップ(餌のように紐にぶら下がった物をとる障害)。ドル札のハンドアップ。いくつもの障害。ラン。芝生のサッカー場に満ち溢れたあのエネルギー。ものすごい高揚感。あんなにキツい思いをしつつ、あんなに笑ったのは初めてでした。あのレースで完全にハマりましたね。クロスヴェガスですよ。そう、クロスヴェガス。
ソフィ・ドゥ・ボア
世界クラスの欧州プロ
ソフィ・ドゥ・ボアは、世界最高のシクロクロス・レーサーのひとりです。アムステルダム出身のソフィは2016/2017シーズンは圧倒的な強さでオーバーオール世界杯トロフィーを勝ち取っています。昨年は負傷と長期間のリハビリに泣かされましたが、今シーズンは復調し、また最高位を狙っています。
シクロクロスの素晴らしい所とは?
森の中やオフロードを走るためには、精神的な集中や注意が必要になります。他のことは一切考えず100%走りにフォーカスすることが私はとても好きです。これがロードバイクでのトレーニングだと、私の頭の中にはいろいろな考えが飛び交ってしまいます。それが心地良いこともありますが、私は完全に集中しなければならないシクロクロスがとても好きです。
レースで最も難しいのは?
スタートが本当に強くなければなりません。私はスタートに強い方で、実際「ホールショット(第一コーナーで1位を取ること)」もよく取るのですが、それでも毎回レースの際にはすごく良いスタートを切らなければと緊張します。シーズンもとても長い。9月にシーズンがスタートすると、2月の最終レースまで毎週2つかそれ以上のレースがあります。一定期間ごとに充電できるロードレースと違う点です。1月か2月のシクロシーズンの終わりには、疲れ切っていますね。
レース中はどんなことを感じていますか?
私のレースの感じ方は、完全にその日の脚のコンディション次第です。自分が先頭を走っていて、キツさも含めてすべてが最高と感じられ、応援も耳には入るものの気が散ることはないというレースもあります。楽しくて、どんどん力が出る感じですね。でも調子が出ない日や、精神的なプレッシャーに負けていたり体調が悪い日には、苦痛をより強く感じてしまいます。観衆の声が耳に入り、とらわれてしまうこともあります。「ソフィー、結婚して!」とか面白いことを言う人もいて、笑ってしまうこともありますが、ネガティブなこともあります。「おい、もっと頑張れ、だらしないぞ」とか、「ああダメだ、もっと行けるはずなのに」とか。アメリカでのレースが好きなのは、こういうことを言う人がいないからです。
ハミッシュ・ロー
長距離に挑んだ初心者
ラファの製品テストプログラム担当コーディネーター、メルボルン生まれのハミッシュ・ローは、昨年シクロクロスに目覚めました。ロンドンのラファHQにいる二十数名の熱心なシクロクロスライダーのひとりであるハミッシュは、同僚2人と一緒に4月に900kmのオフロードを走るウルトラ・エンデューランス・レースの「イタリア・ディバイド」に出走しました。ハミッシュが言うように、「クロスバイクでは何でもできます、本当に幅が広いのです」。
シクロクロスに出会って、自分のライドが変わりましたか?
シクロクロスを走るようになって、それまではこの都市に存在することすら知らなかった場所を見つけることができるようになりました。気づいたよりも、住んでいる所からごく近い場所で走ることができるのです。森を抜ける舗装路を走っていましたが、知らなかっただけで、ドロップハンドルのバイクで走ることができる素晴らしいトレイルがたくさんあったのです。ロードではなんとなく体が汚れたり濡れたりしないように自分を過保護にする感じがあります。それがシクロになると、泥々になるのは当然、多かれ少なかれ家に帰り着く頃にはたんこぶやアザをこしらえているわけで。それもシクロクロスならではですね。転んでも、笑ってまた自転車に飛び乗る。子どもに戻ったような感じです。
シクロクロスにハマったのはいつ?
ラファでは、毎週水曜の朝にライドをすることができるのですが、秋冬シーズン、私たちのグループは毎週エッピング・フォレストのトレイルに繰り出します。私の場合、自転車で最高に楽しむことができるのがこの場所なのです。想像していたよりも、ずっとインタラクティブでした。ヤバめの状況をうまく切り抜けることができた時は思わず声を出したり叫んだりしますね。仲間がうまく走った時も。転ぶかどうかギリギリを攻める楽しさはたまりません。
なぜある国をシクロクロスで縦走?
2017年の終わり、私はラファの同僚たちと一緒に、何か難しくて冒険的でシクロクロスでできるチャレンジを探していました。そこで、ローマからガルダ湖まで全てオフロードで走るレース、イタリア・デバイドを選んだのです。長距離ライドについてはまったくの経験不足で、ツアー・オブ・フランダースのためにベルギーまでの往復をした以上の準備もしなかったのですが、完走することができました。まさに、一生忘れられない経験です。
ニール・フィリップス
オールラウンドな才能
南西イングランドはコーンウォール出身のニールは、ラファのロード、ブルベ、シクロクロスのさまざまなカタログモデルでおなじみの顔です。ニールは、たくさんの勝利を収めてきているライダーでもあります。ファースト・カテゴリーのレーサーであり、今年の夏は英国のクリテリウムシリーズであるツアー・シリーズでエリートプロライダーと互角に闘いました。クロスバイクにまたがれば、昨シーズンは表彰台に8回上がり、2016年にはセルフ・サポートのウルトラディスタンスで最も有名なレース『トランスコンチネンタル(大陸横断レース)』で2位に入っています。
いちばん好きな分野はどれですか?その理由は?
ひとつだけ選ぶのは難しすぎますね。それに、季節ごとに違う種類に乗り換えていけることを楽しんでいるのです。でも、いちばん好きなものと言えば、シクロクロスが僅差でトップですね。グループトレーニングからレースまで、いつも仲間と楽しむことができます。地元ではシクロクロスはわりとリラックスしていて、いろいろなレベルの人が一緒にレースに出て、違うレベルの人と競争することができます。アウトドアが好きなので、一年中外にいることができるシクロクロスは楽しいです。コンディションがテクニカルになった時のハンドリングを磨くことができるし、それがイギリスの夏にクリテリウムやロードレースをする時にもプラスになっています。
シクロクロスで最も楽しかったことは?
昨シーズン全体が特別でした。体力も技術も一段上げることができました。とくに2つハイライトを挙げるなら、スリー・ピークス(英国北部のヨークシャーで開かれる英国内のシクロクロスカレンダーで最も過酷なレースのひとつ)で13位に入れたことがひとつ。いわゆる「思い出すと楽しかった(走っている間は辛いだけ)」タイプのレースですが、景色と人々が素晴らしかった。伝統的な方面で言えば、ナショナル・トロフィー(英国のシクロクロス・レースシリーズ)の20位に入れたことがもうひとつのハイライトです。このスポーツの真のヒーロー、ニック・クレイグ(英国シクロクロスとクロスカントリーで複数回ナショナル・チャンピオンを獲得)と闘うことができたのが格別でした。
大陸横断レースの魅力とは?
体力的、精神力的に自分に走りきることができるのかわからず、土地勘もないチャレンジでした。けれど、新しい方角に向かって自分の可能性を広げ、学んだり発見をすることにはいつも興味を持っています。こんなことでもなければ訪れることもなかっただろう初めての地域を走ることで人々の生活や環境を垣間見ることができるのです。