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シーイング サウンド

最新の限定版コレクションの発表に合わせて、長距離ライドにおける音楽との関係性についてラクラン・モートンに聞きました。

今から数年前まで、プロロードレース界においてラクラン・モートンはオーストラリア期待のステージレーサーとして将来を嘱望される存在でした。現在、彼はロードレースの枠にとらわれないエンデュランスレーサーとしての名声を欲しいままにしています。これまでワールドツアーの舞台で喜怒哀楽を経験した彼は、新しい自分を見つけ、長距離アドベンチャーライドにおけるレジェンドに仲間入りしたのです。

いわゆるロードレースにおける3シーズンの間に、彼はマウンテンバイカーとしてレッドビル100に挑み、クロスバイクでヨークシャーのスリーピークスを駆け抜け、南スペインの荒野を横断するウルトラエンデュランスレースを走り、同時にワールドツアーのロードレースにも参戦しました。

そんな彼の存在を際立たせ、世界中で話題のニュースとして報じられたのが長距離のアドベンチャーライドでした。2020年のGBデューロでの記録樹立と、2021年の途方もない『ALT TOUR(もう一つのツール)』達成は、彼の可能性の限界を押し上げたと言えます。それらの挑戦の中で、いつも愛らしい笑顔を浮かべる彼の耳元に何があったかをお気づきの方も多いはず。そう、イヤホンです。

どんな場所でも、どんなライドでも、ラクランにとって音楽はインスピレーションの源になっています。ラクランのプレイリストから着想を得た新しいシーイング サウンド コレクションの発表を祝福するために、いつもどんな曲を聴きながらペダルを回し続けているのかについて、実際に彼に聞きました。

実際にライドで窮地を迎えた時に音楽に助けられたようなエピソードはありますか?

音楽が気持ちに力を与えてくれると初めて感じたのはGBデューロの時。イヤホンを通して耳に入ってくる音楽がペダリングへのモチベーションにダイレクトに繋がるという感覚があった。モチベーションが削がれた時に頼ってしまう曲がいくつかあるんだ。逆に、ライド中に聴くのは気が進まないけど、家に帰ってから聴くと幸せな気分になる曲もある。最初の夜、色んな要因が重なってペースも上がらず苦しんでいる時、1曲を3時間もリピート再生していた。まるでブランケットに包まれているように心地よかった。その曲を聴くといつでも当時を思い出してしまう。自分を見失いかけた時もその曲のおかげで前に進むことができたんだ。その時から、ほとんどのアドベンチャーライドで音楽を味方につけることにした。



若い頃から音楽に親しんでいたのですか?

子どもの頃はヴェロドローム(トラック競技場)を走るのが怖かった。住んでいた地域にトラックがなかったので、レースが行われるシドニーのオリンピックヴェロドロームまで5時間ドライブするんだ。家を離れた瞬間から緊張感が増していった。レースを走りたくて、勝ちたくて、でもヴェロドロームの急な斜面と木製の路面が怖くて。そこで12曲を選曲してプレイリストを作って、CDを焼いた。あの急なバンクに挑むために、居心地の良さを感じるための選曲だった。自分を奮い立たせるCDと読んでいたけど、実のところ、自宅で寛いでいるような気分になる選曲だったと思う。とにかく音楽は自分の気持ちに力強く影響を与えてくれた。おかげで多くのことを成し遂げることができたと思う。

バイクライドの際、常に音楽を聴いてきたのですか?

いつもではないかな。初めてライド中に音楽を聴いたのは11歳か12歳の頃。背中のポケットにディスクマン(ポータブルCDプレーヤー)を詰め込んで走っていた。自分で焼いたCDはすぐに音飛びしてしまうので、路面の穴ぼこを避けて走っていたんだ。究極の孤独なライドになりがちなまだ薄暗い朝のトレーニングが、新しい音の発見に生まれ変わった。今まで見飽きた景色に新しい光が当たった。イヤホンのおかげで、1人のトレーニングが楽しみで仕方がなかった。今でも音楽は好き。もちろん誰か気心の知れた友人と走る時は、会話を埋めるための音楽なんて必要ないけど。もしくは川の流れが聞こえる時。水の音が聞こえ始めると、いつもヘッドホンを外すんだ。



フィニッシュまであと数キロというところで力尽きた時、どんな音楽を聴いて自分を奮い立たせますか?

いつもと違う曲かな。そういう窮地こそ、初めての曲を試す絶好の機会だと思う。気持ちがクリアになって、正しく曲を聴くことができるオープンな状態。心に響かない場合もあるけどそれでも構わない。そういう状況ではもう音楽に頼っていない場合が多いから。心に響いた場合は、その曲は翌日からのプレイリストに入るんだ。

ポッドキャストは聴きますか? お勧めは誰?

ハミッシュとアンディ。オーストラリアのコンビで、くだらないことを話させたら彼らの右に出るものはいない。面白い話につい聞き入ってしまうんだ。それだけかな。『アップ アンド ヴァニッシュド』の新シーズンがリリースされたら聴く時もある。でもそういった内容のあるものはバイクを降りた時のために置いておきたい。

ラクランのプレイリスト

「これはいつもライドに出かける際に愛用しているプレイリスト。どんな気分や感情にも合わせられるように色んな曲を詰め込んでいる。気持ちを上げてくれる曲、落ち着かせてくれる曲、ちょっと罪悪感のある曲。どれも昔のある場面に連れて行ってくれたり、人生の何かのタイミングを思い出させてくれる。自分の音楽の趣味に影響を与えた人物が2人いる。

「若い頃に聴いていた音楽のほぼ全ては、兄のアンガスから紹介されたものだった。そして今は妻のレイチェルから。ヘッドホンから流れてくる曲のほとんどは彼女の影響を受けている。このプレイリストにシャッフルをかけて、ロングライドのお供にしてほしい」



Joan, I’m Disappearing - City Calm Down
Territory - The Blaze
Humiliation - The National
Easy Easy - King Krule
Paper Trails - DARKSIDE
The End - The Doors
Clair de Lune - Flight facilities
Worried Shoes - Daniel Johnston
Under The Milky Way - The Church
IMY2 - Drake
Blinded By The Lights - The Streets
Song To Siren - This Mortal Coil
Station Wagon - Shame
Glue - Bicep
September Song - Agnes Obel
Hold You Forever - Aero Manyelo
Come To Life - Kanye West
Little Habits - Petey
Lord Let It Rain On Me - Spiritualized
L'Amour Et La Violence - Sébastien Tellier