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Part2 - 国士峠...のはずだった

海岸線を離れるときに急な登り坂はつきものだ。伊豆スカイラインの登り口に到達するまで、幾つかの登りをこなすことになる。路面がアスファルトからコンクリート舗装に変わると、途端にケイデンスが30rpmまで落ちる。急勾配の登りが決まってコンクリートなのは、アスファルトを圧して固めるロードローラーが機能しないためだ。ハンドルにしがみつくライダーの横を、ディーゼルバスが煙を巻き上げながら加速していく。その姿はまるでロケットの発射風景。トルクに乏しい日本車はエンジン回転数を7000rpmまで上げて急坂を乗り切っている。ライダーはただひたすらペダリングに力をこめる。だがフロントホイールは行き場を探して左右に振れる。その瞬間、腰をサドルに固定するなんて芸当は不可能に思える。


海岸線を離れ、内陸部に向かうに連れて観光客の姿が減って行く。進行方向にオフロードの林道を見つけたので、地図で確認して迷わず突っ込んでみる。どうやら奥野ダムに続く林道のようだ。極地でもないのにこれほど雰囲気のある林道は珍しい。立ち止まって耳に入ってくるのは、岩を舐めるように流れる水音。ラインを読み、荒れた路面をスムーズに駆け抜けて行く。ラフであってもタイヤと路面の接地音だけが耳に入ってくる感覚は、追い風に乗って50km/hで巡航しているときのそれに近い。パンクの犠牲者は渡辺だけだった。


この日最初の登りが奥野ダムを過ぎてやってきた。つい先日まで有料道路だった快走路だ。自転車の通行料金は確か50円だったと思う。料金所にはいつも初老の男性がポツリと立っていた。彼にはライダーの姿さえ数少ない気晴らしだったのか、手を軽くふるだけで素通りさせてくれていた。葉を落とした桜の木々に見守られながら県道12号線を進み、県道59号線で国士峠のアプローチに差し掛かる。絵に描いたような日本の原風景を抜けて行く。

山に覆われたこの一帯にはわさび農家が点在している。もう国士峠は近い。春には沢山の花粉をまき散らすであろうスギの木に覆われたこの峠は、緩やかなカーブを描いて高度を上げる。美しいダウンヒルを思い描きながら登りに向かうライダー。しかし前に現れたのは無情にも「土砂崩れ 通行止め」の看板。迂回路として通った峠道は記憶に残る様なキャラクターもなく、しかも早々に国道414号線に出てしまった。
湯ヶ島温泉まで、特に面白みのない国道をひた走る。迂回で時間をロスしたため、コンビニで食料を調達。背中のポケットに詰め込んで再スタートを切った。伊豆半島東部に大きな登りは無いが、小さな登りと下りの繰り返しにライダーたちは苦戦していた。インターバルは予想以上にライダーのエネルギーを奪い取る。これから挑むのは半島西部に広がる雄大な山岳地帯だと言うのに。




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