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Part1 - 海岸線

朝の冷たい空気を頬で感じながら、短いダウンヒルを経て伊東駅に到着した。特急が停車するこの駅を出て左に行くと、太平洋はもう目と鼻の先。海の香りを感じながら、まずは国道135号線を東に向かう。交通量の多い国道をルートに入れるのはどうにも気が引けるが、この先すぐ脇道にそれることを他のライダーに言い聞かしてその場をしのぐ。波音とともにやってくる海風に心地よさを覚えながら、サバの仕分け作業を行っていた魚市場で脚を止めた。まだまだスタート直後でペースも上がっておらず、少し立ち寄っても誰も文句を言わない。伊東の漁港には400kgのマグロは水揚げされないが、近海で穫れたアジやサバが豊富に並ぶ。どこか別の海域で捕獲され、水揚げされた場所で価値が決まるようなブランド志向の市場ではない。

国道135号線を離れ、ますます海を近くに感じる脇道に入る。ここから城ヶ崎までは、海岸線に沿って登りと下りを繰り返す起伏に富んだコース。この付近一帯には数多くの噴火口が点在しており、かつての活発な火山活動が現在の地形を作り上げた。海岸線に達した溶岩を迎え撃ったのは、太平洋の荒波。浸食作用によって深く削り取られた急峻な崖が海岸線を形成している。その荒々しい岩に挑むのは、ロッククライマーと釣り人たちだけだ。ライダーはそんな景色を横目に、幾つもの登りと下りをこなしていく。
波は押し寄せては戻る。まだまだフレッシュな脚がクランクを心地よいペースで回し続ける。太陽はまだ低い。観光客は朝ご飯をほおばっている頃だろう。2日前に辛い思いをした 瑞牆山 が、遠い昔のことのように感じる、美しい晩秋の朝だった。
海沿いの崖にへばりつくように作られた漁村を抜け、立派な灯台と観光客向けの吊り橋が架かった城ヶ崎に到着。そこに引き締まったシングルトラックがあったことを記憶していたので、皆を引き連れてトロピカルな植物が覆う林の中へと入って行く。スムーズと思った記憶はこんな物だったのか。たしかにマウンテンバイクであったことで実際の路面状況はつかめていなかったのか、予想以上に振り回される。まぁ、パナレーサーはそんなことで音を上げたりしないが。

城ヶ崎を離れ、太平洋に別れを告げて、ライダーは内陸部に向かった。




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フィーチャー・メニュー

「しばし走ると漁港に。朝の競りは終わってしまったようだが、たちこめる魚の匂いとゴム長の男達。海に生きる男達。大自然に生活を懸けている人もいれば、モニターに映る株価の数値に懸けている人もいる。人間の多様の不思議を思う。」- 小俣雄風太




「東京から車で約2時間。伊豆に向かう時は決まっていつも熱海と伊東を通過する。ともに起伏に富んだ東海岸にへばりつくように作られた街であり、遠目に見ると、その姿はまるでモンテ・カルロ。温泉が湧き出る二大観光都市だが、今となってはどこか哀愁の漂う寂しい印象を受ける。その名物はテディベアやアンモナイト、猫、蝋人形のミュージアム。人々は他人のテディベアを見るために、特に躊躇せずに1000円を支払う。ストレスの多い日常生活から抜け出すための口実としてはそれで充分ということか」- 矢野大介


