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Part2 - 荒川ダム

適度な場所で昼食を取ろうにも、山の中にあるのはバイク(モーターサイクル)ツーリング仲間が集まる隠れ蕎・ラーメン屋のみ。決まってそれらの店は週末だけの営業だ。山梨の麺類と言えばほうとう。観光客トラップ的な場所はいくらでもあるが、納得がいかないままずるずると時間と距離だけが過ぎて行く。空腹感を感じながらも、止まるタイミングが難しくなって来る。そろそろ内池から「グリコーゲンが...」というボヤキが出てきそうでヒヤヒヤだ。

しかし問題は内池ではなくヴィンセントだった。気管支炎を患いながら強行参加した彼は、大事を取ってバイクを降りることとなる。常にスマイルフェースの陽気なオージーに似合わない悲しい顔で車へ乗り込む。肉体的な痛みであればおそらくそのまま放っておいただろうが、唯一元プロサイクリストとして誰よりも苦痛に対する抵抗は高いはずで、彼のジャッジメントを信用するしかない。ただ理由がなんであろうと降りる者に対して冷やかし無しで逃すわけにはいかない。午後から急激に気温が下がり、あっという間に日が暮れる山間部で、登りと下りの繰り返し。登りで汗をかき、下りでは凍る様な風を全身で受け止める。そしてまた登りで汗をかく。ジャケットのジッパー処理だけではとても体温調整が追いつかない。この場所とこの時期ならではの特質は、どんなハイテクジャケットでもカバー出来ないだろう。
ヴィンセントが抜け、4人になったグループは、荒川ダムまで細かく連続する無数のトンネルを抜ける。ようやく深い山から脱出し、ホッとした気持ちになる。いつも求めて夢見るのは、誰も知らない遠い遠い自分たちだけの世界。しかし実際は、その何分の一程度のレベルの世界に入っただけで不安で潰されそうになる。そうして結局は文明に頼っていることを自覚するのである。

まだ紅葉が残る荒川ダムの上で、ちょうど良い蕎屋を見付けて昼食を取る。と言ってもすでに太陽は傾き、今にも暮れそうな雰囲気だ。時刻はおそらく2時ごろ。4時には太陽の位置は標高3000mを超す南アルプスの尾根辺りだろうから、先行きが不安になる。他のライダーはその何倍の不安を感じているのだろうか。
山梨県No.1観光地の昇仙峡のすぐ奥にある荒川ダム。ここに来る観光客は、天狗や仙人が住んでそうな岩場でも見たいのか、ただ単に興味を持っただけなのか。会話の少ない老夫婦が店内で黙々と食事している姿を横目で見つつ、我々はデッキのテーブルを囲む。暖かい蕎を口にしたときは、何だかもうライドが終わった様な気分になりそうになる。
再スタートは当然全員の足が鉛の様に重い。


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「トンネルで真っ暗になった瞬間ペダリングをやめると、まるで自分が意識そのものの存在になったかのようになる。或は、ペダリングだけしていると、自分は脚だけの存在となる」 - 小俣雄風太


「この影の長さは確実にライドが終わる前に暮れる。何かストーリー性をむりやり造り出すわけでもないが、何かと条件が悪くなり、周りが文句・不安を言い出すとモチベーションが上がって来る。」 - 矢野大介


「なんでサドルが外れるんだ!?ふざけるな。俺のせいか?頭の中が混乱して誰に文句を言っていいのかわからない...」 - 渡辺誠一


「体調を崩してバイクをラックに乗せて車に乗り込んだが、曲がりくねった下りで逆に酔って悪化するところだった。確実に自転車に乗っていた方が楽で楽しかっただろうな。またいつか戻って来るか」 - ヴィンセント・フラナガン

